音を求めて増えるばかりの弓
まだ独り者の頃、私の乗馬好きを知って、「きっと白い馬を飼おう」と釣り竿を投げた人物がいた。まんまと餌に食いついたわたし(笑) しかしいまだに自馬の姿はない。
「昔の約束はひょっとして、、、反故になったのかしら」と持ち出すと、我らが白馬はバイオリンの弓に化けたのさ、と逃げられた。
スーホの白い馬ではないけれど、ビオラ、チェロも同様バイオリンの弓の毛は白馬の尻尾の毛でできている。楽器をなさる方はご存知と思うがモンゴル、カナダ、シベリア、スペイン、イタリアなどが主な供給地域となっている。弓本体はファイバー製など優れたものも出てきているが、それでも楽器の弦と接する部分は馬毛以外ない。演奏時間の長短にもよるが2~~~6ケ月に一度専門家の手で「毛替」をしてもらう。
そんなわけで、パートナーの言うこともあながち大きく本筋を離れてはいないのだ。どうかモンゴルやカナダの白馬さんたち、美味しい人参をいっぱい食べて新しい尻尾の毛をふさふさと生やしてくださいね。くれぐれも尻尾のない切ない姿にならないように。